はじめに
社会人の「成長」と聞いて思い浮かべることは何でしょうか?
例えば、「英語を話せるようになる」「ITスキルを身につける」といった、知識やスキルを身につけること。
他方で、「自ら考え行動できるようになる」「他社の意見を受け入れられる」といった成長もあります。
同じ「成長」という言葉。これらの「成長」には、どんな違いがあるのでしょうか?
この記事では、成人発達理論を基に、人材育成において必要な「成長」とは何かを読み解いていきます。
目次
-成人発達理論とは?
-5つの発達段階
-発達段階が上がると
-水平的成長と垂直的成長
-批判的内省を行う
-免疫マップを使用する
-免疫マップの活用法
-垂直的成長を可能にする組織にする
-管理職やリーダーには、「コーチング」の教育を
成人発達理論
成人発達理論とは?
成人発達理論とは、発達心理学者のロバート・キーガン氏が提唱した理論です。
「人間は成人になっても意識や知性が発達し、成長を続ける。」という考えのもと、その「成長」のメカニズムとプロセスを紐解いた理論です。
5つの発達段階
成人発達理論では、成人の意識の発達を以下の5段階で示しています。
【5つの発達段階】
段階1:具体的思考段階
幼少期・未成年が該当します。すべての成人は基本的にこの段階を超えているとされます。
段階2:道具的主導段階(成人人口の10%)
自分中心的な認識の枠組みを持っています。他者を道具のようにみなします。他者の視点を考慮し始めると、段階3へ移行していきます。
段階3:他者依存段階(成人人口の70%)
組織や集団に従属し、他者に依存する形で意思決定をします。自らの行動基準を持たず、組織や社会によって行動が規制されます。
段階4:自己主導段階(成人人口の20%)
自分なりの価値観や意思決定基準を設け、自律的に行動します。自己成長に強い関心があり、自分の意見を明確に主張します。
段階5:自己変容・相互発達段階(成人人口の1%未満)
自分の価値観や意見にとらわれることなく、多様な価値観や意見などをくみ取りながら的確に意思決定をします。他者の成長に意識のベクトルが向き、他者が成長することで自分も成長する(相互発達)という認識があります。
発達段階が上がると...
段階があがると、客観的に物事を考えられるようになるだけでなく、自分自身のことさえも客観的に見ることが出来るようになっていきます。ななめ上から視点のRPGゲームのようなイメージで、自分のことを客観的に見られるような状態です。
そうなることによって、他人の意見にも振り回されたり、自分の固定観念に固執して他者に腹を立てたりすることがないような「器の大きい人」になっていきます。
リーダーになる人材を育成するためには、このような成長段階を意識した教育設計を行うことも必要です。
水平的成長と垂直的成長
成人発達論では、「水平的成長」と「垂直的成長」の2つの成長があるとしています。
水平的成長とは、知識やスキルを獲得することを指します。プログラミングや英語、資格の勉強などがそれに当たります。
垂直的成長とは、上記の発達段階が上がっていく成長です。人としての「意識」や「認識」の変化ということになります。多様な意見や価値観を受け入れて器の大きな人になっていくことです。
垂直的成長を遂げるために
批判的内省を行う
批判的内省とは、自身の行動の振り返りと共に、その根底にある自身の「信念・固定観念・価値観」を問い直すことです。
人は必ず自分だけのフィルターを通して世界を認識しています。そのフィルターが人によって違うことで、物事の捉え方が人によって変わってくるのです。
自分がどのようなフィルター(信念・固定観念・価値観)を通して、そのような思考に至ったのかを内省することで、新たな気づきを得られ成長に繋がります。
免疫マップを使用する
批判的内省を行う上で、ロバート・キーガン氏は、「免疫マップ」というフレームワークを推奨しています。
免疫マップとは、「改善目標」「阻害行動」「裏の目標」「強力な固定観念」の4つの枠で構成されたフレームワークです。
【免疫マップ使用例】
免疫マップは、以下の流れで作成します。
改善目標:達成したい目標は?
阻害行動:改善目標の達成を妨げている行動は?
裏の目標:阻害行動を取り続けてしまう裏の目標(理由・目的)は?
強力な固定観念:このような阻害行動、裏の目標になった根本となる信念・価値観は?
免疫マップの活用法
見ての通り、免疫マップ自体に打開策は含まれていません。
例えば、このマップを基に、「この強力な固定観念は本当に正しいのか? 思い込みではないだろうか?」と考えてみましょう。
すると、新たな気づきを得られ、多様な考え方を受け入れられるようになることで、垂直的成長に繋げることができます。
人材育成への活用
垂直的成長を可能にする組織にする
管理職やリーダーが成人発達理論を理解し、部下にスキルや知識を教えて水平的成長を促すだけでなく、垂直的成長を促せるようにしましょう。
また、自分の意見を言えない雰囲気だったり、自ら考え行動することを許容しない「マイクロマネジメント」を上司が行っている場合、垂直的成長は困難です。成長ができる環境づくりも必要です。
「1on1」や「面談」など、部下の成長のために時間を確保する習慣をつくることもおススメです。
管理職やリーダーには、「コーチング」の教育を
垂直的成長は、上司が何かを教えることで強制できるものではありません。
部下自身が他人の価値観を受け入れ、自分の意識を認識できるようにならなければいけないのです。
そこで、部下自身に気づきを与えるために、上司がコーチングスキルを身につけることが部下の成長とって非常に重要です。
まとめ
「人間は成人になっても意識や知性が発達し、成長を続ける。」
成人発達理論を基に、自身の成長と自社の人材の見直しをしてみましょう。
そして成人発達理論では、部下を上位の段階に導くためには、上司が部下よりも上の段階にいる必要があるとされています。
そして、将来の優秀なリーダーを育成するためには、垂直的成長が不可欠です。垂直的成長ができる組織体制を作ることを意識して人事設計を見直してみましょう。
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